この街の天気予報は100%当たる。
全て人の手によってコントロールされているのだから当たり前といえば当たり前なのだが。
今日は水曜日。23時まで雨の『予定』だ。
人々は雨の降る日は家の中で過ごすか そうでなくても屋根のある場所で過ごす。
たまに俺のようにわざわざ傘を差して雨の中 外を歩く変わり者もいるが。
雨が降る。しとしと しとしとと。
そんな中に彼女は いた。
雨の中 傘もささずに ただ 天の一角を瞬きもせずに見つめ。
無造作に下ろされた長い髪からぽたり ぽたりと雫が滴る。
いったい彼女はどれほどの時間ここに立っていたというのだろうか。
歩み寄り 話しかける。「帰らないのか」と。
彼女は 振り向きもせず一点を見つめたまま呟く。
「飛べない」 と。
「空があんなにも狭く 低いから。」
だから飛べない と。
可笑しいと思った。彼女には 空を飛ぶための翼など無かったのだから。
薄く笑い そう伝えると 彼女はちらりとこちらに視線をよこし そのまま俯いてしまった。
ぽたり ぽたりと雫が滴る。
その横顔に 誰かの面影が重なるように見えた。
黄金の髪をなびかせた白い羽の天使。
瞬きの間にその幻は消える。
幻の跡にたたずむのは 漆黒の髪のびっしょりと濡れ俯いた少女。
輝く金の髪も 純白の翼も持たぬ ただの少女。
少女が小刻みに体を震わせる。
やはりこれだけびっしょりと濡れているのだから寒いのだろう。
少女に自分の差していた傘を差し掛ける。
少女が ただ虚ろな瞳でこちらを見返す。
瞳が ネオンの光で 赤に 黄に 青にと 鮮やかに移り変わる。
「行くとこ無いんなら 俺んとこ 来るか?」
かつて誰かにも問いかけたように 少女に問いかける。
少女は何も言わず ただ 小さくうなずいた。
もうすぐ雨がやむ。
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