開け放った窓から夏の初めの気持ちの良い風が入ってくる。
一歩でも外に出れば太陽の
文字通り
"熱烈な歓迎"
を受ける訳だが
日陰にさえ居ればそれもなく
ぽかぽかと気持ちが良い暖かさだ。
膝から下をベットから垂らし仰向けに寝そべり
うとうとと
まどろむ。
窓から入る風が体の上を優しく通りすぎて行く。
その風の柔らかさを感じながら
ゆっくりと
目を
瞑った。
何処からか女性のやさしい歌声が聞こえる。
・・・可愛い坊やおやすみなさい・・・
誰が歌っているのだろう?
とても懐かしくて暖かい声・・・
月のお船でゆらゆら揺られ
星の瞬き子守唄
ゆらゆら揺れて星の国
私の坊や星の国
お眠りなさい私の坊や
ゆらゆら揺れて
ツキの舟・・・
・・・あぁそうか
これは母さんの歌だ。
まだ母さんの中に居た頃に歌ってくれた
あの
懐かしい
ウタ。
安心した様子でゆっくりと流れてくる子守唄に耳を傾ける
暖かなまどろみ中で・・・
閉じていた瞳をゆっくりと開ける。
気がつけば太陽は傾き
開け放った窓からその赤い光を
名残惜しそうに投げかけていた。
うとうととしていたつもりが
何時の間にかぐっすりと寝てしまっていたらしい。
夢を見ていたような気はするが
夢の内容は全く覚えていない。
ただ
とても暖かくて懐かしい気持ちと
少し
哀しい気持ちが
ぽっかりと
心の中に浮かんでいるだけだった。
ゆっくりと瞬きをした目の端から
涙が一粒
頬を伝って流れた。
眩しい夕暮れの光の所為かもしれない。
「ユラユラゆれて、ツキのフネ・・・」
ゆっくりと
囁くように口ずさみ
懐かしそうな
それでいて
少し淋しそうな笑みを浮かべ
瞳を閉じる。
ゆらゆらゆらら
ツキの舟
可愛い坊やは
月の上
またたく星の
夢の国
ゆらゆら揺られておやすみなさい
ゆるららゆらら
ツキの舟
通りを歩いていた行商人風の男が
聴いた事の無い言葉の唄に
開けはなたれた窓を見上げる。
店番の老婆が
やさしげな歌声に微笑ましげに目を細める。
開いた窓から流れてくる歌は
太陽が家の門をくぐって東の端から月が顔を出すまで
ゆっくりと流れ続けていた・・・
Music by Enrai_Mirai
[時の子守唄]