*『 とある烏の物語 』――― 烏はなぜ黒いか知っている? 烏はね、 太陽に近づき過ぎたから、 体を焦がして 黒くなってしまったんだよ? 烏はなぜ太陽を目指したか知っている? 烏はね、 あんなにも暖かくて、 あんなにも大きくて そんな太陽と話がしたくて、 そんな太陽に触れてみたくて、 だから太陽を目指したんだよ? だけどそれは叶わなかった。 近づけば近づくほど 太陽はその熱で烏を拒んだ。 それでも烏は少しでも太陽に近づきたくて、 自分の羽が黒くなろうとも 飛んで、 飛び続けて、 でも結局は願いは叶わず 烏は地上へまっさかさま。 痛む体で見上げれば 空には変わらぬ太陽の姿。 暖かく、 大きく、 何事もないかのように。 烏は泣いた 哀しくて 悲しくて 涙が枯れ 声が枯れ 心が空っぽになるまで。 体は黒く 声は枯れ 誰も元の烏と気づかない 烏は悲しくなかった なぜなら烏は空っぽだから 全てをなくしてしまったから だから烏は嗤った 仲間を 太陽を 自分を 世界を しわがれた声で 大きく 呪うように 全てを 嗤った。 もう烏は太陽を目指した烏ではなかった 姿も 声も 心も では今の烏はなんなのか この烏はなんなのか この烏は 世界の終焉を望む 名も無い烏